2025-02-04
親の不動産を売却しようと考えているとき、持ち主である本人が認知症になっていないかは大事なポイントです。
不動産の売却には持ち主の意思が関わり、本人の健康状態は手続きの流れに影響しやすいため、注意が必要です。
さらに今回は、親の不動産は本人が認知症になっていると売却できないのかに加え、主なトラブルと成年後見制度について解説します。
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親の不動産を売却するにあたり、持ち主が認知症になっているときの注意点は、以下のとおりです。
持ち主が認知症になっていても、他人が勝手に不動産の売却することはできないのが基本です。
理由は、病気によって本人の意思能力が失われている点にあります。
意思能力とは、自身の行為によって生じる法律的な結果を判断する能力です。
意思能力が失われている状況で結んだ売買契約は、基本的に無効とされます。
対価と引き換えに、自身の不動産を第三者に引き渡す行為であることを持ち主が十分に認識できていないときは、不動産を売却できません。
また、たとえ家族でも、本人の同意を得ない限りは手続きをおこなえません。
以上の点から、認知症になっている親の不動産は、子ども側では売却できないのが基本です。
ただし、認知症と一口にいっても病状はさまざまです。
それほど病状が進んでおらず、十分な意思能力があると判断されるなら、持ち主側で手続きをおこなえる可能性があります。
不動産の売却は、持ち主が同意すれば代理人を立てて手続きを進められます。
そのため、持ち主の入院などで本人による手続きができないときでも、不動産の売却自体は可能です。
一方で、持ち主が対応できない理由が本人の認知症だと、代理人による手続きは不可能です。
代理人を立てるには、持ち主に委任状を作成してもらう必要があります。
持ち主が認知症になっていると、本人に十分な意思能力がないため、有効な委任状を作成できません。
有効な委任状がないと、同居している子どもでも代理人になれないため、手続きを進める際には注意しましょう。
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認知症になった親の不動産を売却するときのトラブルには、以下のものがあります。
認知症になった親の不動産については、子ども側が勝手に売却してしまうケースがあります。
たとえ持ち主が認知症になり、対象の不動産を本人が使えなくなっていても、勝手に売却するのはNGです。
子どもの判断で自由に売却できるのは、まず親が認知症となる前に生前贈与を受けていたときです。
対象の不動産がすでに自身の所有物となっているなら、子どもの判断で売却できます。
さらに、親が亡くなり、法的に有効な遺言書で不動産を売却するよう指示されていれば、子ども側で対応してもトラブルのリスクは低めです。
上記のような条件がないと、親の不動産は子ども側で売却できません。
具体的なトラブルとしては、親が亡くなったときに不動産の相続権を得る親族から、民事訴訟を起こされることなどが挙げられます。
認知症になった親の不動産を売却する主な理由には、介護費用の捻出があります。
認知症が進んで介護が必要になると、自宅で面倒を見るにも、施設に入るにもお金がかかるものです。
介護費用を子ども側で用意できないときは、親の不動産を売却して現金を工面するのがひとつの方法です。
ただし、介護費用が不足している状況でも、親の不動産の売却について、きょうだいや親族が同意してくれる保証はありません。
勝手に売却してしまうと、きょうだいや親族とトラブルに発展するリスクがあります。
この点は、親の介護を一手に引き受けている方でも同じです。
介護費用の関係で、不動産の売却がどうしても避けられないときは、きょうだいや親族まで事前に話をとおしておきましょう。
親の死亡時に相続権を得るきょうだいや親族から同意を得ておけば、トラブルのリスクは下がります。
あわせて、資金の使い道を客観的に示せるよう、介護費用を購入したときの領収書などはすべて保管しておくことが大事です。
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認知症になった親の不動産を売却したいときは、成年後見制度を利用するのがひとつの方法です。
成年後見制度の概要は、以下のとおりです。
成年後見制度とは、認知症になった方を支援するための制度です。
利用すると後見人が選任され、契約の締結や誤って結んだ契約の取り消しなどを代理でおこなえます。
そして、成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。
親がすでに認知症となっているときに利用できるのは、法定後見制度です。
利用すると、家庭裁判所が後見人としてふさわしい人物を選び、支援に必要な権限を与えます。
後見人になれるのは、親族・弁護士・司法書士などです。
一方で、未成年者や破産者、後見の対象者に対して訴訟を起こしたことのある方などは除外されます。
なお、候補者のなかで誰を選ぶかは、裁判所が判断します。
子どもは候補者になれるものの、実際に選ばれる保証はありません。
くわえて、後見人になることを希望していた方が裁判所から選ばれなかった場合でも、不服の申し立てはできません。
候補者の職業や経歴、後見を受ける方との利害関係などを考慮し、ふさわしい人物を裁判所が選ぶ点に注意が必要です。
成年後見制度の一種である任意後見制度は、本人が認知症となる前に自身の後見人を決めておく制度です。
本人の意思能力が失われる前に手続きをおこなうため、誰を後見人とするか、どのような権限を与えるかなどを柔軟に決められます。
ただし、任意後見制度を利用するには、本人が認知症となる前に公証人役場で契約を結んでおかなくてはなりません。
親が認知症となった段階で必要な準備が終わっていなければ、本制度は利用できません。
法定後見制度で選任された後見人は、不動産の売却を代理でおこなえます。
しかし、持ち主と同等の権限を有しているわけではなく、手続きにあたってはいくつかの条件が課せられています。
まずは、後見を受けている方の利益につながる売却行為であることが前提です。
住宅をただ現金化したいなどの理由は、一般的に認められません。
後見を受けている方が施設に入所する費用を捻出するためなど、本人の利益につながる理由なら認められる可能性があります。
また、本人の利益につながる理由があっても、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要です。
居住用不動産は、持ち主にとって重要な資産であり、後見人側では勝手に売却できません。
もし、無許可で売却した場合は、契約が無効とされます。
家庭裁判所で許可を得るには、専用の申立書を提出しなくてはなりません。
許可の申請にあたっては、後見を受けている方の利益につながることを前提として、さらに施設への入所で居住用不動産が不要になったなどの理由が求められます。
認知症になると意思能力が失われる点と、不動産の売却手続きは持ち主しかできない点から、認知症になった親の不動産は基本的に売却できなくなります。
売却に関するトラブルには、子ども側が勝手に売却してしまう、介護費用を目的とした売却に同意を得られないなどのケースが挙げられます。
成年後見制度は認知症になった方を支援する制度であり、後見人が契約手続きなどを代行できますが、不動産の売却には条件があるため注意が必要です。
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